製造業DXとは?DXに向けた課題、技術、実現方法をまるっと解説!

製造業のDXを言うとどのようなことを考えるでしょうか。

工場のDXや自動運転、ロボットなどの規模の大きいものを想定しがちです。もちろんその側面はありますが、私がコンサルティングの現場で感じることは、従業員の働き方の改善などが急務になっていると言うことです。

製造業は、非常に大きな産業であるにも関わらず、旧態依然とした働き方によって、人材不足が深刻な問題となっています。現場を改革しつつ、新たな会社の形に変化していくことが、経営者や管理者に求められている姿であり、そのためのデジタル化の方法を余すことなく記事にしました。

直近2年間で、私自身が手掛けた40以上のDXプロジェクトにおいても、共通する部分が多い従業員のためのDXやまた、製造業特有の海外企業と戦うためのテクノロジーも解説しています。

次の一歩につながるために書きましたので、ぜひご一読ください。

製造業における課題

製造業は、日本のGDPの約2割を占め、非常に大きな市場となっています。

この製造業の現場が危機にさらされています

その代表的なものが、記憶に新しいマスク不足を始めとしたサプライチェーンの問題。

製造ラインを中国などに依存していたため、日本の製品であっても、輸入ができないという自体になりました。

こうした製造業の現状を踏まえて、『 ものづくり白書2021 』がまとめられ、4つの警鐘が鳴らされました。

人材不足

2017年の経済産業省の調査によると、大企業と中小企業合わせた製造業の企業において、実に94%が人手不足と回答しています。さらに、そのうち人手不足によって経営にまで影響が出ていると回答した企業は約32%に達しました。

人材不足になった原因には、以下の点があげられます。少子高齢化による労働人口の減少により、製造業に就職したいという若者が減っています。また、都市部への一極集中により、地方では、特に人材が枯渇しています。

昭和の日本を支えた製造業も、きつい、汚い、危険の3Kの代表格のような扱いとなり、嫌厭される職業となってしまいました。また、海外メーカーや他の業種と比較した際に、実態はどうあれ、労働条件が良くないなどと言ったマイナスイメージも定着してしまっています。

2025年までに中小企業の約半数で、後継者が決まっていないことも人材不足に拍車をかけています。( 中小企業白書 より)会社を担う経営者が育っていないため、積極的な人材採用もできず、せっかく意欲のある人がいても門戸が開かれていないことも原因となります。

デジタル活用の遅れ

製造業において、設備投資が見送られる現状が続き、30年もの、40年ものの機材を使用している現場も少なく有りません。そのため、新しい技術を導入しようとしても、対応しておらず、デジタル化が進んでいない現状となります。

本来のデジタル化の目的は、省力化、省人化をしていくことにありますが、設備投資ができないということが、デジタル化の足かせとなっています。

技術のレガシー化

製造業の多くでは、商品開発を職人の経験と勘に頼っているのが現状です。

阿部寛さんが主演し、「ロケット品質」をうたった製作所のセリフ「技術力をなめるな」というセリフがありますが、多くの製造業では、職人の技術力に大きく依存しています。こういった技術力は、職人の長年の経験に裏打ちされたものですが、「その職人じゃないとできない」という状況でもあります。

人材不足により経営者だけではなく、技術職の後継者も不足しており、こういった技術が、継承されていかないことが問題となっています。

グローバル化と競争の激化

工業先進国ドイツでは、2011年にいち早く国家プロジェクトとして、インダストリー4.0に取り組みはじめました。

インダストリー4.0とは、製造現場にITの力を導入し、スマートファクトリーを増やしていくという取り組みになります。中国でも2025年を目指した「 Made in China 2025 」が発表され、人件費の高騰や環境問題にいち早く取り組んでします。こうしたグローバル環境の変化により、過去に言われていた「安い賃金」以外の理由で、日本の工場に頼まなくても、海外で生産したほうがメリットが大きくなるという状況が生まれています。

製造業がDXをすることによる効果

これらの課題を解決するための方法が、DX(デジタルトランスフォーメーション)になります。

製造業において、どのような分野でテクノロジーがするのかを見ていきたいと思います。

インダストリー4.0(第4次産業革命)

総務省の発表によると、『「インダストリー4.0」とは「第4次産業革命」という意味合いを持つ名称であり、水力・蒸気機関を活用した機械製造設備が導入された第1次産業革命、石油と電力を活用した大量生産が始まった第2次産業革命、IT技術を活用し出した第3次産業革命に続く歴史的な変化として位置付けられている。』とあります。

インダストリー4.0の目的は、IT技術を駆使して、スマート工場化することで、人間、機械、その他の資源を通信網で結び、どこで生産され、それがどこに届いたかを把握することが可能とすることです。これらの仕組みの整備が進めば、既存の製造プロセスやバリューチェーンの変革や新たなビジネスモデルの構築も推進に繋がります。このインダストリー4.0の中軸を担う技術が、IotとAIになります。

IoT(Internet of Things)の活用

モノのインターネットと訳されますが、できることは、主に3つになります。

  1. インターネットを介して離れているモノを制御する「遠隔制御」
  2. インターネットを介して離れているモノを監視する「遠隔監視」
  3. インターネットを介して離れているモノ同士を通信する「データ送受信」

これらの技術が、製造業で利用した場合にどのようなメリットがあるのかというと、人が見張っていなくても、「リモートで機器状態の確認」ができ、「異常があれば、停止等の制御」をして、「機器同士から得られるデータの送受信」ができることにあります。

では、インダストリー4.0のもうひとつの一翼を担うA.I.はどうでしょうか。

A.I.の活用

A.I.は、日々進化を遂げていて、今のA.I.の特徴は、「学習」にあると言われています。その真価は、ロボットやIotなどと組み合わさったときに発揮されます。
例えば、ロボット分野でいうと、自動で配膳をしてくるロボットだったり、ペットロボットなど日常で我々が触れるような機会も増えてきています。では、製造業におけるA.I.の活用はどのようなものでしょうか。先に触れたIotとの併用により、製造業の現場では、以下のような活用が進むと考えられています。

生産管理の自動化

これまで人が担ってきた、生産ラインや在庫管理が、DXによって進化します。人の目でチェックしないと出来なかった作業をA.I.が覚え、それをIotが組み込まれた機器が管理していくという世界がすでに起こっています。

機器の状態を自動検知

工場で稼働する機器の検査、保守点検等も自動化される対象となります。専門のメンテナンス業者が、定期的に行っていた業務を機会が自分で検知し、異常があった場合に、知らせるということが、可能となります。

映像解析による接近アラーム発報

A.I. とカメラ(映像)が組み合わさった技術になります。製造業においては、取り扱うものによっては、高度な危険を伴います。工場内でテープを貼ったり、警報を出したりしながら、作業者の安全を担保していますが、これが、映像によって、人が危険エリアに踏み込みそうな場合に、アラームを発することが可能となります。

作業員の動線を最適化

これも、映像やIotを組み合わせた技術になります。生産ラインにおいて、歩留まりが発生しているエリアや従業員の動線に時間がかかっているエリアを特定し、それを最適化することで、作業効率を上げることが可能となります。

搬送の自動運行による作業最適化

工場内での搬送者の自動運転により、工場間で製造物を運んだり、工場内での物品の搬送を自動で行ったりできるようになります。Amazonの工場では、物品の棚をロボットで移動されることで、作業の最適化を図り、効率的な運営をしています。

このように、A.I.やIotの技術を利用して、人員不足や技術の継承をサポートし、人が介在しなくても、工場が回るような仕組みを作るのが、製造業のDXになります。

製造業のDX化を阻害する課題

このような効果が期待できる製造業DXですが、実際には、それほど進んでいません。それには以下のような理由が考えられます。

現場のITリテラシーが低い

テクノロジーを導入しようとしても、それを利用する人の問題がまずはじめにあがります。 ITリテラシー がそれほど高くないと思われているため、仕組みを導入しようとしても、現場で活用できないという課題があります。

本来的には、現場に合わせて活用できる導入方法を検討していくべきですが、そこまで最適化をしていくと費用も大きくなります。

一回の投資額が大きい

上記の話しにも通じますが、機械やロボットなどが導入の対象となるため、一回の投資額、数千万円〜数億円になることも製造業DXの推進を阻害する要因となります。

かけたコストを10年単位で回収していくことを考えると、綿密な計画の上での決定となるため、難しい決断を迫られることになります。

新しい業務フロー設計が描けない

DXを推進する上で、欠かせないのが、デジタル化したあとの新しい業務フローを設計することになります。単にデジタル技術を導入するだけではなく、現場の改善案をまとめて、自社にあったデジタル化計画を考える必要があるので、この課題に対応した人材を確保することは容易ではありません。

DXするための人材がいない

上記の課題にも関連しますが、製造業において、DXを推進する人材が枯渇しているのが現状です。社内で育成するにも時間を要します。大きな投資を計画する人材ではなく、現場の小さな改善を繰り返し実施して、人材を育成していく必要があります。

(ロボット)開発ベンダーの不足

ロボットなどの開発ベンダーが不足していて、DXを進めようとしても、開発会社の確保が難しいのが現状です。今後、この傾向が顕著になってきますので、開発ベンダーを確保するためには、先行して計画化までを済ませておく必要があります。

製造業のDX先進事例紹介

自らを変革し続けるTOYOTA

TOYOTAは、自動車を作る会社から、すべての移動を快適にする「モビリティカンパニー」へと事業定義を一新しました。

その一つの象徴が、富士の裾野に作られた ウーブンシティ になります。インダストリー4.0の実現に向けて、人が生活する空間を作り、パナソニックなどと共同で、実証実験が開始されます。TOYOTAの取り組みだからと見ることもできますが、この変化は、TOYOTA経済圏100兆円とも言われるすべての産業に影響を及ぼす変化になります。

SONY

SONYもコロナ禍においても大変業績が好調な企業の一つになります。

このソニーは、ソニーグループとして新しく船出をし、全世界のグループ会社のデータ基盤を統合するプラットフォーム制作に舵を切りました。

音楽やゲームといったエンタメ領域からカメラなどの精蔵領域までの様々なデータを統合して、 GAFA などのメガIT企業と競争していくためです。

沖電気工業

沖電気工業は、スマートファクトリーの導入を推進している企業になります。

工場2拠点で共通している設計部門をバーチャル空間で統合し、一つの機能として、統合的に管理できる仕組みを導入。今後は、全国的にネットワークを増やし、製造の効率化をより推進していく予定です。

自社で実現するためのステップを徹底解説

製造業のDXは、様々な課題がありますが、それを乗り越え推進していくにはどのような取り組み手順が必要でしょうか。

推進手順を以下の通り解説していきます。

長期的なDXのビジョンを固める

製造業においては、テクノロジーの導入は、業務を一新する可能性があります。最初に実施するのは、今後自社がどのような変化をしていくかというビジョンを明確にすることです。

TOYOTAが、自動車会社からモビリティカンパニーに変革したように、あなたの会社は、◯◯を製造している会社からどう変化していくかをビジョンとして固める必要があります。

フィクションですが、下町ロケットに出てくる佃製作所は、部品製造会社からロケットの部品を作る最高品質の製造業というビジョンを実現させて、大きな飛躍を遂げました。

DXを推進した先の未来を描くことが、第一歩になります。

現状の自社の課題を知る

ビジョンを固めた上で、現状の自社の課題もまとめる必要があります。

自社の課題を知り、それを改善することも忘れてはいけません。自社でどんな課題を持っているのかを見聞きし、現場での改善の種を知ることが次のステップになります。

ギャップを知る

ビジョンを明確にし、現場での課題を知ることで、そのギャップを知ることができます。

数年後のビジョンをゴールとして、今の現状をスタートと考えた場合に、どこから改善していくことが、ビジョンを達成する優先順位を決めることができます。

実現に向けた中期計画を描く

ビジョン達成までの優先順位がある程度かまったら、次は中期計画を描く工程になります。

予算や時期、また投資対効果を見据えて、中期計画もフェーズごとに分けて、フェーズ1ではここから取り組む。次のフェーズではと言った計画を描く必要があります。

人材育成も計画に盛り込み、よりビジョン達成までの具体的な計画とする必要があります。

構築に向けた準備

計画化のあとは、実際に現場責任者も巻き込んだ、フェーズ1のスタートになります。

小さな改善を繰り返す必要があるので、まずは現場の声を元にDXを進めることがいいでしょう。業務フローの改善やどのテクノロジーを採用するかなど、場合によっては、外部コンサルタントや開発ベンダーも交えて進めていくことでより確実性が高まります。

最初の一歩を踏み出せる製造業コンサル会社3選

1社目 テクノ経営総合研究所

2社目 株式会社ディアイスクエア

3社目 ワクコンサルティング株式会社

まとめ

製造業のDXは、国をあげて推進する重点課題となっています。

実際に、製造業のプロジェクトに携わっていると、一つの変化に多くの人が関わり、コストも大きくなるので、わかっていてもなかなかDX推進の決断が難しい場面も容易に想像できます。

しかし、経済産業省が推進しているように、DXを進めていかなければ、半導体が台湾製に移ったように、国際競争力が落ち、いつの間にか日本で製造する理由が失われていきます。生き残りをかけた変革のためにDX推進を検討してみてはいかがでしょうか。

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