DXコンサルタントとして、企業のDX推進をサポートしていると、まれにこのCDOという役職を持つ方にお会いすることがあります。日本においては、CDOが就任している企業は、大企業においても5社に1社。すべての企業を合わせると10%未満となっています。(DELL社−CDO設置率とデジタル化進捗より)
この記事では、今後10年間で起こる世界全体のデジタル化の波を乗り越えるために企業内で必要になるCDO(最高デジタル責任者 , Chief Digital Officer)の役割や資質を解説してきます。
DX推進を担うCDOを任命する企業が年々増加してして、2020年には日本企業の9社に1社は、CDOを任命しており、その重要性は、ますます高まっていると感じます。

ぜひ、DX人材を探している企業の方も、今後キャリア形成を考えている方にも、この記事が参考になれば幸いです。
コンテンツ一覧
CDO(Chief Digital Officer)とは
CDO(最高デジタル責任者)は、一言で言えば、企業内において、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を推進する最高責任者になります。
企業がデジタル情報や、クラウド、モバイル、ソーシャルメディアなどの最新技術を活用してビジネス価値を生み出すことを支援する役割を担っています。デジタル分野で成功するためには、アナログからデジタルへのビジネスモデルの転換が必要になることがよくあります。
DXと呼ばれるこの転換は、企業のテクノロジーアーキテクチャ、ビジネスプロセス、製品、職務などに大きな変化をもたらすため、長い年月を要することがあります。
そのため、戦略的なリーダーシップと変化への対応は、CDOの重要な役割の一つとなっています。
CIOとの違い
日本においても、IT部門のリーダーとして、最高情報責任者(CIO)を役職として設置している企業はあります。CIOは、組織内のITインフラとサービスの運営に注力してきました。
上述したとおり、CDOの役割は、デジタル・アドバンテージを生み出し、顧客体験を向上させるために必要な人材、プロセス、テクノロジーに目を向け、より外に目を向けることを目的としています。
では、この2つの役割に違いはあるでしょうか。
CIOは、個人情報の管理やインフラ整備などの企業の守りの部分のIT戦略に長けた役職であり、対してCDOは、AIやIoTなどの先進技術を既存のビジネスに組み込んでいく攻めのIT施策のエキスパートと言えます。
CDOの役割
ガートナー 社の調査によると、多くの企業が、CDOの役割を明確にせずに人材を採用していることがわかりました。私の経験では、CDOが効果的に活用するためには、6つの重要な役割があります。
- デジタル戦略の策定
デジタル機能を戦略的優先事項に マッピング する。会社が目指す方向にデジタルが貢献していなければ、デジタルは必要な可視性やサポートを得られません。
- イノベーション の創出
デジタルを活用したイノベーションの創出を担う役割を果たし、デジタル機能が実現する新しい機能性やスケールメリットを生み出すことです。
- 会社内のデジタルプロジェクト管理
社内各所で起こっているデジタルプロジェクトの進捗状況を管理して、一元的に監視することが重要です。実際に進めるのは、現場責任者かもしれませんが、それが適切に導入・運用されているかを見極めていく必要があります。
- 新しい効率性と ROI の測定
手動のプロセスをデジタルに置き換えることで、コスト削減と収益創出の両方を実現することができます。CDOは、社内のデジタル化を監督することで、業務効率や生産性を測定する必要があります。
- 内部開発チームを組成
優秀な人材を採用し、維持する必要があります。外部ベンダーに頼り切りの状況から素早い変化に対応するための社内開発チームを組成する必要があります。場合によっては、既存の情報システム部と協業することになります。
- 幹部の仲介者となる
これは、DXプロジェクトの展開において、他の経営幹部の参加を促し、プロジェクトの優先順位を設定し、どの現場から改善をしていくかを決めていく必要があります。その点でも、経営幹部の意見を集約し、また仲介しながら、プロジェクト推進を円滑に進める役割があります。
これらの役割のほとんどは新しいものなので、現職の経営幹部の足を引っ張ることはなく、CDOの役割を明確にすれば、様々な部署や経営幹部と協業することができるようになります。
DXにおけるCDOの必要性
上記のCDOの役割を総合的に伝えると「CDOの主な任務は、デジタル変革のための主要な優先事項を示し、イノベーションのための窓口となることです。また、戦略を実現するためのデジタルスキルを組織が備えているかどうかを常に把握し、投資対効果(ROI)を評価することも求められます。」と要約することができます。
DXがほぼすべての企業の将来にとってますます重要になっていることを考えると、CDOの任務は広範な内容を包含している一方で、非常に大きな責任を負っています。CDOは企業のCEOの直属であることが一般的で、他の企業内の重要人物よりもはるかに大きな裁量権を持ち、行動することができます。
また、一方で、旧来型の日本企業では、急速なデジタル化を良しとしない傾向もあるのも事実です。「業務の実態に沿っていない」「現場のことをわかっていない」と言われることもあるでしょう。
CDOを担う人物像はどのようなものになるか次の章で見ていきます。
CDOに求められる資質
CDOは、社内でも大きな裁量権を持ち、会社全体に影響を持つ改革を断行していく役職になります。世界的に見ても、このポジションは、新たなエグゼクティブとして増えている状況です。CDOを採用する上での資質についても、見ていきたいと思います。次の10年を担う人材にはどのような資質が必要でしょうか。
スキル1:ストーリーテリング
CDOは、デジタル技術が組織や個人に良い体験を生み出すことを語っていかなくてはいけません。優れたデジタルストーリーテリングと ユーザーエクスペリエンス は、DXの基本となります。
優れたCDOは、テクノロジーによる変化をストーリーとともにどのように伝えるべきかを知っている人物であるべきです。また、製品やサービスを使って顧客に感動的な体験をしてもらうためには何が必要かを知っている人でなくてはいけません。
スキル2:イノベーション
CDOは、テクノロジーとビジネスの架け橋となる必要がります。デジタル・イノベーションを推進するための視点と実行力を持ち、それを推進するために、時代の流れをしっかりと把握していなければなりません。
これは、CDOが、イノベーションを理解することで、企業がデジタル技術を使って市場に新鮮なアイデアをもたらす責任を担うことになります。
スキル3:テクノロジーの新しいトレンドと製品を理解する
CDOは、テクノロジーとテクノロジーの潜在的な将来性を深く理解し、常に新しいデジタルのトレンドや製品を把握していなければなりません。
成功するためには、何が世の中に出回っているのか、何が登場するのか、そしてその両方をリードしている市場の動向を熟知していることが重要です。ひとつの製品やトレンドを見逃すと、たとえ大企業であっても沈没しかねないからです。
スキル4:実行力
CDOが直面する最大の役割は、DXの推進です。その理由は、デジタルの世界は流動的であり、DXがビジネスモデル全体を変えてしまう可能性があるからです。
実行するためには、深い技術的知識や優れたプロジェクトマネジメントだけでなく、経営陣の政治的な問題を解決し、変化への抵抗を切り抜ける能力が必要です。変革への抵抗は、おそらく最大のハードルであります。CDOは、社員を知り、現場の管理職を理解し、アジャイルのような小規模な改革を積み重ね、この抵抗を最小限に抑えます。
スキル5:ポジティブな影響力を持つ
上述しているように、CDOには多様で強力なスキル群が必要です。DX推進の先頭に立つということは、CDOがリーダーであり、パイオニアであり、社内に影響力を持つことを意味します。影響力を持つことで、企業はDXを勢いよく進めることができます。
CDOは、他の役員、取締役会、スタッフ、ベンダー、競合他社、業界のリーダーなどにポジティブな影響を与えなければなりません。CDOはおとなしい人のためのポジションではありません。世界の仕組みを変えようとする、前向きで豊かな戦略的思考を持つ人のためのポジションなのです。
まとめ
ここまでCDO(最高デジタル責任者)の役割やDXにおける重要性、資質を見てきました。世界的に見ても、まだまだ新しいポジションであり、次の10年のデジタル化を担う重要な役割でもあります。
あなたの会社のDXを進めるための役職として、CDOを任命し、どんどん推進してもいいかもしれませんね。