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生産性改善2026-06-1115 min read

DXより先に、生産性改善が必要な理由

DXツールを導入しても成果につながらない企業に共通するのは、業務構造・数字・人材配置の整理が後回しになっていることです。

生産性改善DX業務設計KPI

DXは、成長企業にとって避けて通れない投資になりました。顧客管理、会計、勤怠、在庫、営業支援、チャット、BI、生成AIなど、すでに複数のツールを導入している会社も多いはずです。それでも、経営者の感覚として「便利にはなったが、利益が伸びた実感は薄い」「担当者は忙しくなったのに、会社全体の判断は速くなっていない」という違和感が残ることがあります。

この違和感は、DXそのものが悪いから起きるわけではありません。多くの場合、ツールを入れる前後で、業務構造、見るべき数字、人材配置が整理されていないことが原因です。DXは仕組みです。仕組みは、何を実現するために使うのかが決まっていなければ、会社の利益構造を変える力を持ちません。

株式会社日淺では、生産性改善の設計思想をPX、Productivity Transformationと呼んでいます。PXはDXを否定する言葉ではなく、DXを利益に接続するための考え方です。構造、仕組み、人材を同時に整え、限られた人員と時間でより大きな粗利を生み出せる状態をつくる。その順番を間違えないことが、DX投資を成果につなげる第一歩です。

第1章 DXを入れても成果が出ない会社で起きていること

DXを入れたのに成果が出ない会社では、現場で似たような現象が起きています。システムを入れたはずなのに、入力する場所が増える。業務フローを変えたつもりなのに、結局Excelに戻る。新しい画面を使える担当者だけが詳しくなり、その人が異動したり退職したりすると運用が止まる。これは珍しい失敗ではなく、導入前の設計が不足している会社でよく起きることです。

特に年商10億円を超える成長企業では、すでに事業が回っています。既存顧客がいて、現場のやり方があり、長年使ってきた帳票や管理表があります。その上に新しいツールを重ねるだけでは、現場は「今までの業務に加えて、もう一つ入力する場所が増えた」と感じます。経営者はデータを見たい。現場は入力負担を減らしたい。この二つが接続されないままDXを進めると、導入した仕組みがかえって負担になります。

また、ツールのコストは見えやすい一方で、利益への影響は見えにくいものです。月額費用、初期設定費、運用担当者の工数は増える。しかし、それによって粗利がどう変わったのか、手戻りがどれだけ減ったのか、意思決定がどれだけ速くなったのかが測られていなければ、経営判断は曖昧になります。DX投資の評価が「便利になったかどうか」で止まってしまうのです。

さらに、DX担当者が一人に偏ると、その人の努力で何とか回っているだけの状態になります。ツールの設定、マスター管理、現場からの質問対応、経営会議用の資料作成まで一人が抱える。本人は頑張っていても、会社全体としては属人化が別の形で生まれています。DXが属人化を解消するはずだったのに、DX運用そのものが属人化するという逆転が起きます。

  • 現場の入力負担が増え、業務が複雑化している
  • ツール費用や運用工数は増えたが、粗利への影響が見えない
  • DX担当者だけが詳しくなり、全社展開できていない
  • 経営会議では、結局別の資料を作り直している

こうした状態を解消するには、ツールを増やす前に、会社のどこで利益が生まれ、どこで時間が失われ、どの人材に仕事が集中しているのかを見直す必要があります。DXの前に、あるいはDXの後でも、会社の構造を整理する。それが生産性改善の出発点です。

第2章 DXは「仕組み」であり、利益構造そのものではない

DXツールは、会社の仕事を便利にするための仕組みです。しかし、仕組みは利益構造そのものではありません。営業支援ツールを入れても、提案フローが標準化されていなければ案件品質は安定しません。会計ソフトを連携しても、月次決算の入力、承認、報告の流れが整理されていなければ、月末の負担は残ります。勤怠システムを入れても、労務管理の責任者と確認タイミングが曖昧なら、集計作業は人に依存します。

利益構造とは、どの商品や案件が粗利を生み、どの業務が時間を消費し、どの固定費が成長を支えているかという関係です。DXはこの関係を見える化したり、流れを速くしたりすることはできます。しかし、何を見える化し、どこを速くするべきかを決めるのは、経営設計の仕事です。ここが曖昧なままツールを入れると、会社は画面を増やしただけになります。

たとえば、売上を増やすことだけを目的に営業ツールを入れると、案件数や活動量ばかりを追いかけることがあります。しかし本当に見るべきなのは、粗利単価、提案までのリードタイム、受注後の手戻り、担当者ごとの再現性かもしれません。売上は重要ですが、利益が残らない売上を増やしても、会社は忙しくなるだけです。

同じように、工数削減も単なる時間短縮で終わらせてはいけません。削減した時間を、どの仕事に振り向けるのかまで設計して初めて意味があります。確認や転記の時間が減ったなら、その時間を顧客対応、提案改善、育成、経営判断に使う。そうした再配分がなければ、効率化は一時的な余裕で終わります。

DXは仕組みです。利益を生む構造と、人が使いこなす運用があって、初めて経営の力になります。

したがって、生産性改善の順番は「ツールを選ぶ」ではありません。まず利益構造を分解し、次に業務フローを整理し、その上で既存ツールや新しい仕組みをつなぐ。最後に、現場と幹部が使いこなせる役割と会議体を決める。この順番を守ることで、DXは単なる効率化ではなく、経営システムになります。

第3章 生産性改善は、構造・仕組み・人材をつなぐ経営設計

生産性改善という言葉は、作業時間の短縮や人件費削減のように捉えられることがあります。しかし、成長企業に必要な生産性改善は、それよりも広い経営設計です。構造、仕組み、人材を同時に整え、同じ人員、同じ時間でも、より粗利の高い仕事に集中できる状態をつくることです。

構造とは、利益が出るまでの仕事の流れです。受注、設計、発注、納品、請求、改善といった流れの中で、どこに手戻りがあり、どこに承認待ちがあり、どこで情報が分断されているのかを見ます。ここを見ずに自動化しても、悪い流れが速くなるだけです。まずは仕事の流れを見える化し、利益に近い流れへ組み替えます。

仕組みとは、DX、AI、自動化、データ活用を含む運用基盤です。ただし、仕組みは会社全体の流れに接続されている必要があります。勤怠、営業、経理、現場管理が別々に動いているなら、どの情報をどの順番でつなぐのかを決める。必要なツールを足すよりも、既存ツールの役割を整理する方が先です。

人材とは、誰がその構造と仕組みを動かすのかという設計です。できる人に仕事が集中しているなら、スキルマップで棚卸しを行い、分散と育成の計画を立てる必要があります。ITが得意な人だけが使う状態では、DXは定着しません。各部署の業務スキルに、データを見る力、入力品質を保つ力、改善会議で発言する力を組み込むことが必要です。

  • 構造: 利益が出る業務フローへ再設計する
  • 仕組み: DX、AI、自動化を全体最適で活用する
  • 人材: 配置と育成で成果を定着させる
  • 運用: 会議とKPIで改善を継続する

この三つを同時に扱うのが、株式会社日淺が考える生産性改善の設計思想であるPXです。PXは特別な理論ではありません。経営者が普段感じている「忙しいのに利益が残らない」「現場が頑張っているのに数字が見えない」「できる人に仕事が集まりすぎる」という問題を、構造、仕組み、人材の三方向から解くための整理方法です。

第4章 最初に見るべきは粗利・工数・固定費率

生産性改善を始めるとき、最初から多くの指標を追う必要はありません。むしろKPIが多すぎると、会議は報告で終わります。まず見るべきなのは、粗利、工数、固定費率です。この三つは、会社が利益を生む力、時間を使う場所、人員や設備への依存度を表します。

粗利を見る理由は、忙しさと儲けが一致しないことがあるからです。売上が増えていても、粗利単価が低い案件が増えていれば、現場は忙しくなる一方で利益は残りません。案件別、顧客別、サービス別に粗利を見える化すると、どの仕事に集中すべきかが見えてきます。

工数を見る理由は、会社の時間がどこで失われているかを知るためです。転記、確認、探す作業、承認待ち、手戻り、問い合わせ対応。こうした時間は、売上には直接見えません。しかし積み重なると、提案や改善に使う時間を奪います。工数を測ることで、改善テーマの優先順位が決まります。

固定費率を見る理由は、人手を増やさなければ成長できない状態を避けるためです。人員を増やすこと自体は悪くありません。ただし、処理量が増えるたびに同じ割合で人を増やさなければならないなら、利益率は伸びにくくなります。仕組み化と役割設計によって、同じ体制でも処理量を増やせるかを見ます。

この三つの数字を、現場の行動に接続することが重要です。粗利を上げるために提案内容を変える。工数を減らすために入力ルールを統一する。固定費率を改善するために承認フローを見直す。数字は見るだけでなく、業務を変えるために使います。

  • 粗利: 儲かる仕事に時間を集中できているか
  • 工数: 転記、確認、手戻り、待ち時間を減らせているか
  • 固定費率: 人手を増やさず処理量を増やせる構造か
  • 会議: 数字から次の行動が決まっているか

第5章 90日で始める生産性改善の第一歩

生産性改善は、最初から全社を一気に変える必要はありません。むしろ、最初から大きく始めると、現場の負担が増え、途中で止まりやすくなります。最初の90日は、改善余地の大きい一つか二つの業務に絞り、小さな成功体験を作ることが重要です。

最初の1〜2週は、経営者と幹部で課題を棚卸しします。売上、粗利、工数、属人化、紙やExcelで残っている業務を確認し、改善候補を出します。この段階では、解決策を急がず、どこで時間と利益が失われているのかを言語化することが大切です。

3〜4週目は、改善余地の大きい業務を選びます。現場ヒアリングを行い、業務フローを描き、二重入力、手戻り、承認待ち、情報分断を整理します。現場を責めるのではなく、構造としてどこに無理があるのかを見ることがポイントです。

5〜8週目は、改善後のフローと運用ルールを作ります。入力項目を絞る、確認者を決める、会議で見る数字を決める、チェックリストを作る。新しいツールを入れる場合も、この段階では小さく試すことを優先します。

9〜12週目は、小さな仕組み導入、教育、KPIの見える化を行います。完璧なシステム導入ではなく、「この業務は確かに楽になった」「数字が見えるようになった」「次もやれば変わる」という納得感を作ることがゴールです。

生産性改善の第一歩は、大きな改革宣言ではなく、利益と時間に効く一つの業務を90日で変えることです。

記事だけで自社の優先順位を決めきれない場合は、事例ページで近いテーマを確認し、問い合わせから現在の課題を共有してください。どの業務から着手すべきか、どの数字を見るべきかを整理するところから、生産性改善は始められます。

もう一つ重要なのは、生産性改善を「IT部門の仕事」にしないことです。中小企業や成長企業では、専任のDX組織が十分にあるとは限りません。経営者や幹部が兼務で見ていることも多く、現場リーダーが日常業務の中で改善を担うこともあります。だからこそ、専門用語を増やすより、業務、数字、人材の関係を誰でも説明できる形にする必要があります。

自社で始める場合は、15問程度の簡単な診断から始めると現在地をつかみやすくなります。構造では、部門ごとのバラバラ運用ではなく全体を俯瞰できているか。仕組みでは、紙やExcelが主要業務に残っていないか。人材では、現場リーダーが育成され、属人化している作業を標準化できているか。こうした問いに答えるだけでも、改善の優先順位が見えてきます。

点数が低いから悪い会社というわけではありません。大切なのは、どこから着手すれば変化が出やすいかを見つけることです。構造が弱いなら業務フローとKPIを再設計する。仕組みが弱いなら既存ツールの役割と連携を整理する。人材が弱いならスキルマップと教育を先に整える。診断は評価ではなく、次の一手を決めるための材料です。

社内会議では、最初から大きな理想像を議論するより、現状確認、ボトルネック特定、KPI設定、90日改善テーマ、仕組みと人材という順番で話すと進めやすくなります。売上や粗利だけでなく、手戻り、属人化、紙やExcel業務の現状を確認し、利益やスピードを止めている業務を一つ選びます。

落とし穴は、ツール導入を再び目的にしてしまうことです。生産性改善の話をしているはずが、いつの間にか「どのシステムを入れるか」という話に戻ることがあります。ツールは必要ですが、目的は粗利、工数、固定費率を改善することです。目的を数字に接続し、現場メリットも同時に設計することで、DX疲れを避けやすくなります。

生産性改善は、IT投資の見直しではなく、会社の利益構造と人材の使い方を見直す経営テーマです。

Author

株式会社日淺

中小企業の生産性改善、DX活用、Autopilot導入を支援。業務・数字・人材をつなぎ、利益が伸びる経営システムづくりを支援しています。